第23章 10月 II
昔みたいにみんなが楽しくバスケをしている姿を見れたのは嬉しい、けれどそのみんなの中心にいるのはアリスだ。
それは彼女の思い出の光景とは違う。
「お前、大丈夫なのか?」
黄瀬からアリスを取り戻した火神は、ポンポンと頭を撫でながら言った。
子供扱いしないでよ、と頬を膨らませて抗議している。
『思ってたより楽しかった。私は逃げてるだけだったのかもしれないよ。』
だから本当に楽しかったよ、と心配しないでとアリスは笑った。
「他校生まで巻き込んでこんな事して。大事にならなかったからよかったようなものの、何かあったら大変なのよ?」
文化祭1日目が終わり、体育館に集められたバスケ部員とアリスはカントクからキツイお説教を受けていた。
「それからアリスちゃん!」
『はい。』
無関係の自分がやってしまった事は叱られて当然だ。
でも、悪い事をしたとは思っていない。
大事な人達が理不尽な暴力を受けているのを見て、怒れない人間にはなりたく無い。
「ありがとう。いつも助けてられてばかりね。」
『…ぇ、あの…。』
予想外のカントクの優しい声に、アリスは戸惑う。
「そうそう、例え正式な部員じゃなくてももう仲間だからな。」
小金井の怪我もたいした事なくてよかった、と木吉は暖かい笑顔で言った。
慣れないコスプレに久しぶりのバスケ、普段あまり交流のないクラスメイト達との関わり。それは想像以上に疲れるものだった。
「…お疲れ。」
『青峰君?』
自宅に帰り着く頃にはクタクタで、声をかけられるまで気が付かなかった。
今日は一日、アリスの家で留守番をしている2号を心配して一緒に帰って来た黒子は、来てよかったと思っていた。
「テツ、いたのかよ。」
「いました。」
「っち。」
今、舌打ちしました?と黒子はすかさず突っ込む。
『今日は疲れちゃったね。』
お帰り!と尻尾が千切れる程に振りながら出迎えに出て来た2号を抱き上げると、アリスは二人に向かって振り向く。
『寄って行くでしょ?』
2号も二人を歓迎して目をキラキラと輝かせていた。
夕食は外で済ませて来ており、リビングに通された二人にアリスは飲み物を用意する。