第23章 10月 II
自分達も一緒に相手をしなければ人数が足りないだろう、と土田は言った。
「僕と火神君だけで十分です。」
「ヒャハハハ!こんなボクちゃんとやれってか?」
いつの間にかTシャツを重ね着した黒子が火神のとなりに立っていた。
コートの外に先輩達を連れ出したアリスは、すくっと立ち上がり火神と黒子の方へと向かう。
「話にならねぇよ、ボクちゃんとコスプレ野郎二人で俺達に勝てると?」
『3人よ!』
「お前…。」
アリスの言葉に驚いたのは相手の男達よりも火神と黒子だった。
乱雑にヘッドドレスごとウィッグを外したアリスは、大きな目を吊り上げ男達を睨む。
「へぇ、可愛いじゃねぇか。」
女だろうと容赦しねぇぞ、と男達はイヤラシイ顔をする。
「やめて下さい、アリスさん!」
「そうだ、お前は引っ込んでろ!」
『ハンデは多い方がいいでしょ?』
この格好のままやるのは流石にキツイかな、とアリスはおどけて見せる。
だから脱いじゃえ、と言った彼女はおもむろに背中のファスナーを下げた。
ストンと落ちるドレス、その場にいた全員がアリスの大胆な行動から目を離せない。
「…びっくりさせんなよ。」
ドレスの下にはしっかりTシャツと体育の授業用のハーフパンツをアリスは着ていたのだ。
「今のが一番、心臓に悪かったです。」
裸になるわけないでしょ、と脱いだドレスを拾ったアリスは邪魔にならないように運ぶ。
それなら俺も脱ぐ、と狼男もジャケットを脱いだ。
靴下のままでは滑ってしまうと靴下も脱いで裸足になるアリスは、今の最善策はこれしか無さそうだとは苦笑い。
「調子のってんじゃねぇぞガキ!」
自分達を完全に無視していると気が付いた男達は、勢いよくボールを彼等に向かって投げ付けた。
しかし、それは届かない。
「なんだよ、面白そうな事もやってんじゃねぇか。」
「自分達だけアリスっちとプレイするなんてズルいっス。」
アリスに向かって飛んできたボールは青峰の手に受け止められていた。
「お前等。」
「これなら人数もトントン、文句ないっスよね?」
ジャケットを脱いで素足になり、ニコニコ笑う黄瀬の後ろで桃井が手を振っていた。