第23章 10月 II
バスケ部のブースの前を塞ぐ様に立つガラの悪そうな長身の男達は、参加費も払わずに賞品だけ寄越せと言い掛かりをつけていた。
今年のバスケ部の出し物は、体育館の半面使用権を得る事が出来た為、「現役バスケ部員と勝負!」という安易だが、勝負師心を擽る物だった。
「勝ったら貰えるんだろう?」
「俺達が勝ったら売り上げ全部な!」
くちゃくちゃと行儀悪くガムを噛む男は、ペッとそのまま床にそれを吐き出して威嚇する。
タイミング悪く、主将も副主将も木吉も不在。
水戸部、小金井、土田の二年3人がブース番をしている所を狙われた。
土足のまま体育館に上がり込もうとする男達を3人が止めようとしたが、かなり暴力的にそれは拒まれる。
蹴られたり腹を抑えながら、小金井は火神達を呼びに行ってくれた後輩達の戻りを切に願う。
「早く来てくれ。」
その悲痛な声はまだヒーロー達には届かない。
上がり込んだ男達は、勝手にボールを手に遊び出している。
体格の良さや、これまでの言葉から彼等も少なからずバスケに関わっている事はわかるが、ならばなぜ、こんな事を平気でやれるのか理解出来ない。
「んだよ、早くやろーぜ。」
それとも殴って決着つけてやろうか?と抵抗しない3人を男達は大声で嘲笑った。
『先輩!大丈夫ですか?』
フワフワの水色が小金井に駆け寄った。
「アリスちゃん、火神は?」
『一緒ですよ、それより怪我は?』
大丈夫だよ、と言いながらもだいぶ痛そうに表情をひきつらせる小金井に、アリスは泣きそうな顔を浮かべる。
よく見れば、摩っている腹部には大きな靴の跡があり、水戸部や土田も服や髪が乱れている。
何があったのかは聞かずともすぐにわかった。
「ウチの先輩方が世話になったな!」
それは火神も同じだったらしい。
怒り狂った狼男がそこには立っていた。
「っハハハ!そりゃなんだ?!」
「コスプレか!?」
今のうちにカントクや他の先輩達を呼んで来て、と降旗に伝えたアリスは、福田と河原には負傷しているだろう三人の介抱を一緒にしてほしいと言った。
「なんだっていいだろ?お前等程度なら、これでもハンデが少ないぐらいだ。」
しかし、相手は5人。しかもみんな火神と並んでも引けを取らない体格の大学生。