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君と僕とが主人公LS

第3章 4月 II


「…は?」


背後でリングが軋む音がして、タンタンとボールが弾みながら転がっていく音がした。
その一瞬は確かに時間が止まったように思えた。
古びたストバスコートで最近よく見かける女。
ボールは持ってはいないが、フリースローラインに立ち、まるで獲物を狙った獣の様にリングを見つめている姿に惹きつけられる。
きっとどこかでバスケをやっているに違いない。
しかし、いつ見かけても彼女はボールを手にしてはいなかった。
だから今夜は自分がそれを用意した。
バスケ初心者ではない事はわかっていた、けれどどの程度のプレイヤーなのかはわからない。
本当にただの暇つぶしのつもりだった。


『私の勝ち、ですね。』


青天の霹靂とはまさにこの事だ。
ドリブルの基本姿勢からシュートまで、完全に見失った。
彼女は自分の良く知ったプレイヤーに似ている。


「アンタ、すげーな!」

『へ?』


なめてかかっていたせいもあったのだろうが、まさかこんなあっさりと頭上を越えて決められるとは思っていなかった。


「視線誘導、だろ。テツ以外に出来る奴がいたなんてな。」


これは面白いオモチャを見つけた!と思っているのだろう。
人を睨む様な目が子供の様に変わった。
フリースローラインからほぼ動かず、そこから素早いシュートモーションで放たれたボールは見事にリングに吸い込まれたのだ。


『凄いですね、バレちゃいましたか。』

「まぁな!俺の友っ…、知ってる奴にも同じ事する奴がいるからな。」


無意識の内に操られてしまう、バスケットと言うよりも人間の行動心理を利用したテクニック。


『そうですか。でも、今回は貴方が男性だからできたんですよ。』

「は?」

『私のおっぱい、見てた隙をつきました。』

「ばっ!」


クスッと笑った彼女は、脱いであったウィンドブレーカーを羽織りファスナーを限界まで上げた。
普通よりも低くしたドリブル姿勢、嫌でも目に入る谷間。
確かにそこに目が向いてしまい、一瞬、ボールから集中が離れた。


『…ん?』


帰り支度を整えイヤホンを耳に入れようとした彼女の動きが止まる。
大粒の雨が彼女の手を濡らしたのだ。


「っくそ!なんだよ!!」


突然降り出した雨。
いきなり最大出力で降り出した雨に、雨宿りする場所も見つけられない。
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