• テキストサイズ

君と僕とが主人公LS

第20章 9月 II


それは緊張からではなく、恐怖に違い感覚だった。
それに気が付かない今吉ではない。
そう怯えんなや、とクスクス笑う。


「知っとる奴もおるやろ、アメリカ帰りの如月アリスちゃんや。今日は特別にアドバイスでも貰えへんかと思ってな、来てもろうたんや。」

「やっぱり!!」


今吉の言葉に反応した部員の一人がパタパタと走ってその場を離れる。
なんだ?と残ったみんなが彼が戻って来るのを待つ。
息を切らしながら戻って来た彼の手には月バス。


「これ!!」


彼が大きく広げたページには、大人と子供程の体格差があるにも関わらず、同世代の男子と混ざってストバスで活躍しているアリスが大きく写っていた。


「凄い!アリスちゃんバスケやってたんだね!」

『…今吉さん、酷いです。』


何か嫌な事をされるかもしれないとは思っていたが、こんな仕打ちをされるとは思ってもいなかった。
でも、ここで泣いたりしたらきっと今吉を更に喜ばせてしまうだけだろう。


「ちゅーわけで。ちょっと見て行ってぇな。」


ポンっと背中を押されて前に出させられたアリスに、みんなの視線が集まる。


『はじめまして、如月アリスです。怪我でプレイヤーを引退してずっとバスケから離れてたのでまともなアドバイスは出来ないと思いますが、折角来たのでよろしくお願いします。』


声が震えない様に必死に自分を装ってそう言ったアリスに、部員達は暖かい目を向けていた。
部室棟の屋上で惰眠を貪っていた青峰は、下の方の騒がしさで目を覚ました。
うるせぇな、と呟きゴロっと寝返りをうつ。
練習には出ないくせに、練習時間中に帰ってしまう事はない。
本心ではバスケをしたい、けれど今はバスケがつまらない。


「行こうぜ!」

「あぁ、面白そうだな!」


何がそんなに楽しいんだろうか。
いつもよりも更に騒がしい声にもう寝てもいられないと体を起こした青峰は、大きく伸びをする。


「男バスが面白い事やってるって。」


面白い事なんてあるわけがない。
しかし、たまたま聞こえた声が気になってしまう。
だからもう帰ろうと、荷物を取りに教室へと足を向けた。
体育館には部外者のギャラリーまで集まっていた。
みんなが見るのはバスケットボールを持つ女子生徒。
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp