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君と僕とが主人公LS

第20章 9月 II


着慣れた誠凛のセーラー服とは違い、鏡に映る自分の姿にまた、なにやってんだろ、と独り言がこぼれた。
桃井に借りたブラウスは胸元にゆとりがあり過ぎて不恰好になってしまい、自分のニットベストを重ね着した。


「やだ!可愛い!!」

『なんか恥ずかしい。』


いつもパーカーを重ね着している桃井は、ニットベストもいいね!と笑顔。
これならば誰もアリスを桐皇学園の生徒だと疑わないだろう。


「今度アリスちゃんのも貸してね!」


そしたらテツ君に会いに行っちゃおう、とはしゃぐ桃井を見ていると、ただ、制服交換して遊ぶだけだったなら楽しかったのに、とアリスは思っていた。
桃井は唯一の女友達だと思っている。
今回も今吉からではなく、桃井から頼まれていたらむしろ楽しんで引き受けたかもしれない。


「それじゃ行こう!」

『うん!』


桃井とアリスが並ぶと人目を惹く。
桃井に案内されて桐皇学園の敷地に足を踏み入れたアリスは、キョロキョロと周りを見ていた。
下校する生徒とすれ違えば「あんな子いたか?」とヒソヒソ話される声が聞こえる。


『やっぱりバレちゃったのかな?』

「大丈夫!堂々としてれば平気よ。」


こっち、こっち、と連れて行かれたのは体育館。


「今吉先輩、着ましたよ。」

『お邪魔します。』


桃井の連れて来た見慣れない女子生徒に、バスケ部員達は手を止める。
今吉は何を考えているのか練習を中断させメンバーを集合させた。
今から何をさせられるんだろう、と不安しかないアリスは、必然的に今吉と桃井に頼るように寄り添ってしまう。


「新しいマネージャーかな?」

「ハーフか?可愛い子だな。」


ザワザワと彼女の正体を探り合う様な声が聞こえ、アリスは桃井の後ろに隠れようと一歩下がる。
やっぱり来るんじゃなかった、と後悔しかない。


「はいはい、静かに。」


パンパンと手を叩き一同を黙らせた今吉は、アリスの腕を掴み自分の方へと引き寄せた。
そのまま腕を彼女の肩に回し、のしかかる様に体を寄せる。
それは何も知らない部員達に見せ付ける様で、なんだそういう事か、と空気が変わる。


「ちょーっと調べたんやけど。アリスちゃんの経歴、驚いたで。」


近付いた耳元で囁かれ、ビクッと体が震えた。
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