第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました
「一松、その……何故怒ってるんだ?」
「お前の全力で応援しますみたいな態度がムカつく」
「だがそれも本心なんだが……」
「じゃあ聞くけど、お前はもうアイツの事好きじゃないって事?」
二人は向き合ったままではあるが、一松はカラ松の目を見れない。
「…………」
「どうなんだよ? そこんとこハッキリして欲しいんだけど」
「お前に……それを聞かれるとは思わなかった」
「…………俺だって、ホントはこんな事聞きたくないんだけどね」
少しの間沈黙が続く。
カラ松も下を向いてしまったが、程なくして口を開いた。
真面目な瞳で真っすぐに一松を見てその気持ちをハッキリと告げる。
「一松、俺は……今もナス子の事を愛している。 だが、同時にブラザーであるお前の事も大事だ」
「ハ……っ、この偽善者が」
「……っ!」
「本当は今にでもアイツの事、抱きしめたいとかキスしたいとか思ってるんでしょ?」
心の中に封じ込めようとしていた想いを煽るように一松がカラ松を責めたてていく。
その言葉はカラ松だって理解しているし、実際の所は出来るものならばそうしたいと思っていた。
思ってはいても、既に愛した女は弟の手に渡ってしまったのだ。
一松がなんとなくナス子の事で苦しんでいたのは理解できる。
だからこそ応援しようと心に決めたのだが、そう言われてしまうと閉ざしていた心の奥にある扉の鍵は開き、中から沸々とした感情が湧き上がってしまう。
「一松、お前は何が言いたいんだ? お前はナス子のハートを手に入れた。それだけで十分じゃないか! 俺が、俺達がいくら頑張ったとしても無理な事を、お前はやり遂げたんだ! 俺の、俺の想いなど通じぬままに……!」
つい声を荒げてしまう。
本当はこんな事を言いたくないのに、開いてしまった扉はなおも大きく開き言葉が止まらない。