第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました

「え、そうなの？」

「うん、あんなテキト～～～、に生きてる人間でも兄弟の事は立ててるんだねぇ意外だわぁ～」

　先程、あんなにしつこい事を言ってきていたというのにも関わらず若干常識的な面がある事に驚いた。
　当たり前と言えば当たり前の行為ではあるのだが……。

　鍵は結局返してもらえなかったので、おそ松が何を考えているかなど一松はわからない。
　ナス子は兄弟を立てていると言うが、あのおそ松の事だ。
　もしかしたら自分やナス子が思う以上の悪知恵が働いているのかもしれないと思い安心は出来ない。

「そんなのまだわかんないよ、それに来てるには来てるんだよね？　ホントはアイツらみんな家に上げてほしくないんだけど」

　これを言ったら兄弟達の気持ちなど知る由もないナス子は困るのだろうと予測するも、黙っていられる訳もなくつい口に出てしまう。
　今までの関係なら確実にこんな事は一松は口に出せなかったであろうが、付き合う事により少しだけついた自信が背中を押し言葉を生み出してくれる。

「なぁに？　もしかして嫉妬～？　愛いヤツじゃ！」

「べ、別に……あ、ダメだ……ちゃんと言う、そう……嫉妬」

「ほは……？！」
　
　予想だにしない素直な発言に変な声を出してポカンとしてしまう。
　だが恋人同士になってから一松は以前から密かに持ち合わせていた独占欲を隠す事があまりなくなってきており、皮肉な面もあれど彼女相手には多少素直に言えるようになってきていた。

「うーん、でもアイツらだって幼馴染だし一松の兄弟でしょ？　弟を拒否すると言うのは……」

「いいんじゃない、それで……」

「いやいやいや、それはちょっと出来ないかなぁ～」

　やはり困っている。
　大方何を言われるかはわかっていたので彼女の意見には賛同は出来ないが否定して悲しませるのも嫌だ。
　
　だから結果、この家出という形になり強引な手段ではあったがこの家に居座り彼女を守ろうと決めた。
　のだが……その思いはナス子には届かない。

「届かないって言うか　言わないし」

「なにが？！」

「いや？　ちょ、ちょっとした独り言……」

　彼の独り言に首を捻るも、いつも通りなので気にしない事にした。