第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました
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「━━━━━は? い、家出?!」
「もうあの家には帰らない……俺はもうココに永久就職する」
「おい、それもしかして自宅警備員的なあれじゃないよね?」
「…………」
「無視かよ!?」
一松が向かった先は勿論ナス子の家のマンション。
部屋に上げてもらうなり相手を一度強く抱きしめ、彼氏の反応が少しいつもと違う事に気づくと何事かと言うように問い詰めた。
そして出てきた言葉がこの……家出である。
愛猫のミケ子が一松の横にピッタリくっついて眠る中、ナス子は一松の足の間に背中を向けて座らされると無言で後ろから抱きしめられている。
「なに、どうしたの急に? 誰かと喧嘩でもしたの?」
「…………」
「だからせめてなんか言ってよ一松~!」
しかし恋人のなんだかシュンとしている様を見ると繊細なガラスのハートを持つ一松に無理やり追求する事が出来ない。
よくわからないが、回された腕にナス子は手を乗せポンポンと優しく叩く。
「黙ってちゃわかんないよ、ねぇ?」
振り向きたくても背後にいる人物ががっちりとナス子をホールドしており身動きが出来ない。
「…………」
「ねぇ、一松? いちまっちゃ~ん?」
「…………鍵」
「ん?」
一言呟くとまた黙ってしまうのだが、至近距離にいた呟きはナス子の耳にも届いた。
「鍵? あ!もしかしてスペアキーの事?!」
「そう、それ……おそ松兄さんに返すように言ったんだけど返してくれないんだよね。 普通ならさ、いくら幼馴染って言っても彼氏が出来たら返すよね? 俺にでもナス子にでも」
「そういえばそうだ、忘れてた」
もう長い事自分の手元にないスペアキーの事など、当に忘れてしまっていたナス子。
今思えば一松と付き合い出してからというもの、おそ松がそれを使って家に不法侵入する事がなくなった事を思い出す。
「忘れてたって、お前そんな大事な事忘れるか?! 重要な事でしょ」
「いやぁ、だっておそ松あんなに適当で馬鹿で遠慮すら皆無の能無し男の癖に私が一松と付き合い出してから勝手に鍵使って家に入って来なくなったよ? 遊びには来てるけど、ちゃんとチャイム鳴らしてるし」