第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました
場所は松野家、現在居間には暇そうにダラダラしている長男が一人。
そして、部屋の隅で体育座りをしていつもの虚ろな目はそのままに、何かを考えゴクリと唾を飲み込む四男がいた。
「ねえ、あのさあ」
「っだよー! また宝くじハズれたぁ!! あー、クソっもうあの店では買わな~い」
「………ねえって」
「暇だなー……、金ねぇしパチンコも競馬もいけない俺って超可哀想~」
「おい、聞こえてんだろクソ長男!」
話しかけても聞こえていないような相手に若干キレて立ち上がる。
するとおそ松はさも今気づきましたとばかりにそちらを見た。
「ん~? なにぃ、いちまっちゃ~ん可哀想な俺に金でも貸してくれんのぉ」
「違うから………あのさぁ、そろそろアレ返してくんない?」
「んん~? アレ?」
「だから……ナス子の家のスペアキー」
つい先日の事、長い片想いが続き悪戦苦闘の末ネガティブが発動しナス子から逃げてばかりいた一松だったが、その彼女から告白を受け、しかも両想いの初日に晴れて二人は初めてを卒業した。
そんな大事な彼女の家のスペアキーは、何故かまだ長男おそ松の手元に所持されている。
ちなみに既に一松とナス子の関係は兄弟全員に知られており、両想いになった次の日に帰宅した末、六つ子の兄弟達から質問責めに合うも、フルボッコにはされなかった。
しかし口々に文句を言われ多少面倒な事にはなったが、卓返しの一松が発動し全員が黙らざるを得なくなりその場は難を逃れる。
日頃から、一松に対しての兄弟達の扱いはそんなに酷い訳ではないので、たまに文句を言われる程度で健全に毎日を送れている。
だが、二人が付き合い始めた事を知っても尚スペアキーを渡そうとしない長男に、一松は腹を立てていた。
「え~、別によくなぁい? お前はナス子の彼氏かもしれないけど、俺はアイツの幼馴染でもある訳だしぃ」