第58章 【R18】【チョロ松ルート】その後
一方渦中の人物、ナス子は仕事の休みもあり、次の日ボケっと何かを悩みながら部屋で珈琲を淹れていた。
私には何の魅力もないのだろうか━━━━━…
付き合ってから早一ヶ月近く、あんなに童貞を気にしていた六つ子達の中の一人。
チョロ松の事を好きだと自覚し、無事付き合う事が出来たのはいいものの、こちらはとっくのとっくに覚悟を決めていると言うのに何もしてこない彼氏にモヤモヤとドス黒いものが心の中を渦巻いていた。
そりゃぁ、キスもして抱き合ったりもした。
なのにそれ以上は絶対進もうとしない。
普通に押し倒しても来る癖に、顔を赤らめるとすぐに身体を退かしてしまう。
「……残念チョロ松」
ポツリと、皮肉を述べるもこの皮肉を聞いてくれるのは一緒に住んでいる愛猫のミケ子だけ。
男の人とは、どうやったら手を出してくれるのだろう。
こんなに愛しいと感じているのに、もどかしい気持ちが心をざわつかせる。
もしかして早速付き合った事を後悔されているのではないだろうかという悪い癖まで邪魔をしてくる始末。
それもそのハズ、チョロ松は幼馴染で弟のような存在であり、自分の趣味全てを知る親友でもあったのだから。
何かの一時の迷いで自分を選んでくれたのかもしれない。
残念な自分を見て、やっぱり違うと言いたいのにコチラに遠慮してしまいそれが言えないのかもしれない。
そんな思いがナス子を日々悩ませている。
珈琲をテーブルまで運びチョロ松の事を考えながら一口飲み溜息、もう一口飲み溜息を吐いた。
「あーもー…どうしたらいいんだ私は! 自分がわっかんないーっ!」
どこかで聞いたフレーズを叫ぶと、机に突っ伏した。
「何やってんの~? あ、俺にも珈琲ちょうだーい!」
ふと頭上から知っている声が聞こえビクリとして背後を見る。
すると、ニヤついたムカつく表情のおそ松がナス子を見下ろしていた。
「…………! おそ松?! あれ?! な、なんで私の部屋の中にアンタがいる訳っ」
「へへ~、お前これの存在忘れてたろ~?」
得意気に片手にポンポンとリズミカルに投げて遊んでいるのは、自分の家のスペアキーだ。