第48章 【トド松ルート】小さな努力
「ねぇ、これはー?」
どんなにお洒落なモールでお洒落な店に入っても、ナス子のチョイスする服は残念なものばかり。
無難なものを持ってきてはトド松の顔色を伺う。
「ダメ、ぜんっぜん可愛くないよそれ! なんでそういつもいつも適当なものばっかり選ぶかなぁ? それじゃちょこっとだけマトモになりましたーって感じの服でしょ? 全く頑張った感じしない!」
「えー、別に頑張らなくてもいいんだけど・・・」
「友達と一緒にせっかく遠出するんだからもう少しマシなの選びなよ姉さん! そんなんじゃ逆に浮いちゃうんじゃないの?! ほら、それ戻してきて!」
いくつめかの無難すぎる服を持ってこられ、またもダメ出しをしてナス子が持ってきた服の場所を指さすと、相手は不満気に渋々と服を戻しに行く。
重たそうな足取りを見てまたも溜息が漏れるばかり。
ふと気が付いたが、今日は自分は姉さんの彼氏だった。
彼氏なのにナス子姉とか姉さんとか呼ぶのはおかしい・・・、最近は自分の末っ子ポジションを利用してナス子にあざとさを出し甘えていたのだが、今日は久しぶりにその名を兄達のように自分も呼びたくなった。
「ナス子」
「え?なに??」
普通に名前を呼んでみると、呼ばれた方も一瞬キョトンとして振り返る。
「呼んだ?トド松?」
特に変化はなく普通に返事をするナス子は、トド松の期待とは裏腹だったが、何故か久しぶりに呼んだその名に自分自身の顔が熱くなると、恥ずかしそうに視線を外した。
「な、なんでもないよ! それよりこっちの服はどう? これなら春らしいし可愛いし、どんなに日頃残念なナス子でも似合うと思うんだけど」
「もう、残念残念ってアンタ言いすぎなんだけど?・・・この服かぁ・・・私似合うのかなこれ? こんなの着た事ないし、肩出てるし恥ずかしいんだけど・・・」
トド松がチョイスした服は、桜色をした肩だしのニットワンピだった。
これならワンピースとしても使えるし、下にパンツやスカートを履いてもおかしくない形状だ。