第36章 危険な香りの温泉旅行 今夜は最高?
談笑が終わると、最終日の夜ともあり一行はもう一度ゆっくりと温泉へと浸かった後部屋に戻る。
部屋に帰ると、既に布団は敷かれており寝る準備も万端だ。
7人で寝室へ行きそれぞれの眠る位置につくと、各自好きな事を始めた。
「あ~あ、結局ナス子と混浴も部屋露天も入ってないんだけどぉ?ここまで旅行に来といて酷くな~い?」
「酷くな~い、普通でしょそれって」
皆が自分の布団の位置に座ったり寝ころんだりしている。
不満そうな長男が布団に仰向けにジタバタ暴れ、恨めしそうにナス子を見るが、ナス子は寝ころんでスマホを弄り知らん顔だ。
そもそも一緒に入る訳がない。
二日目に十四松と混浴に入ってしまったが、それは不可抗力である。
「もう諦めなよおそ松兄さん、一緒に入った所で僕らが想像するような展開になる訳でもないし、思ったより残念なものを見せられた気分になってナス子自身を傷つける事になるかもよ?」
「そこの三男、首絞めていいかな?え?え?オラ」
「わ、首に両手をかけんな!オラつくな!殺す気か!!」
「6人も松がいるんだし一人くらいいなくなったって大丈夫でしょ~?」
今日ナス子が寝る布団の横には首を絞められかけているチョロ松、その隣には一松がいる。
どうやらこの旅行中、全員の隣で寝ると言うルールがナス子の知らない所で作られていたらしい。
多分一日目の口論の後であろう。
それを知らないナス子だが、誰が今日は隣かなどあまり意識していなかったのでその事には全く気付いていなかった。
「お酒も最後まで飲ませてもらえなかったし最終日の夜にしては寂しいよねぇ~」
トド松もナス子と同じように寝ころびスマホを弄りながらあまり興味のない口調で喋る。
旅行中に撮った写真の整理をしているようだ。
「トッティ写真いっぱい撮ったね!」
それを覗き込む十四松が、写真を見て楽しそうに笑っている、スライドされて行く画面を目で追う様はまるで玩具を出された猫や、ボールを前にされた犬のようだ。