第30章 【微エロ*番外編】危険な香りの温泉旅行 売店にて弟松と
「BANANABANANA~ソッコー金持ちBANA~NABA・・・ん?」
ご機嫌なナス子が最近お気に入りの歌を口ずさみながら一人で旅館の中を徘徊していると、売店の入り口でたむろする弟松達の姿を見つけ、背後から声をかける。
「なにしてんの?なんか珍しい物でも売ってる?」
「うわっ!!ビックリしたぁ~!ちょっとナス子姉さん、急に後ろから声かけないでよぉ!」
「そんなに驚く?!こっちがビックリなんだけど?!」
体が跳ね上がるほど驚いてこちらを振り向いた三人に、まさかそんなに驚かれるとは思わなかったナス子もつられて驚いてしまった。
思わず大きな声を出してしまったので、店員さんに迷惑をかけてしまったかな・・・と思いつつレジの方へチラリと視線を向けるが、レジカウンターは無人だった。
レジの横に『お会計はフロントまで』と書かれたプレートが置かれている。
自分達のほかに誰もいなかったことに安堵し、気を取り直す。
「で?何してたの?なんか一生懸命見てたみたいだけど・・・」
そう言いながら、三人の真ん中でそれを持っていた一松の手元を覗き込むと、ナス子の目がスッ・・・と細められる。
一松の手には、成年向け雑誌・・・所謂エロ本というやつが開かれていた。
「ちょっとアンタたち・・・旅行先でまでこんなもの見て楽しいわけ?」
冷めた目を向けられ、何故か満更でもなさそうな一松がニヤリと口端を上げつつ質問に答える。
「別に自宅とか旅行先とか、場所は関係ないよね・・・むしろ非日常の中で見ると余計に興奮するっていうか、そういうこともあるよね・・・」
「ある!!逆にね!!」
「一松兄さんに同意するわけじゃないけど~、見つけたらついつい見ちゃうよね、だって僕達健康な男の子だもんっ」
よくよく見ると、ご丁寧に袋とじまで開けられている。
元から開いていたのか、この三人が開けたのかは定かではないが。
まったく悪びれる様子も恥ずかしがる様子も見られない弟松達に内心舌打ちしながら、ナス子が一松の手から雑誌を取り上げる。
あ、と小さく一言一松の口から声が漏れたが、気にせず雑誌を閉じる。