第21章 危険な香りの温泉旅行 松達の松を見た
「ほぁ~いい湯だったわ~。後はゲームしてゴロゴロしよう~」
風呂上りで体温も上がり、頬も赤く染まっている。
今朝は早起きだった為か既にナス子の目は虚ろだ。
程なくしてナス子が皆の部屋へと戻り、扉を開けようとすると・・・
「ん?」
引っ張っても開かない。
押しても開かない。
横にスライド?・・・開かないていうか構造違う。
「えー、まさかでしょ?!あかなあああぁあぃ!!」
ガコンガコンと引っ張ったり押したりとなんとか扉を開けようとするもやはり扉は開かない。
諦めたナス子は部屋のチャイムを押してみたが、誰からの返事もなく、ただただ悲しいチャイム音だけが木霊する。
そういえばと思い出し、自分がこの部屋の鍵を持っていなかった事に今更気づいた。
返事がないという事は、今頃六つ子も温泉に入りに行ったのではと思い立った。
「うーん、なんという事態。・・・どうしよう、今の時間にしか出現してないモンスター倒せないじゃーん!!」
部屋に戻って早速ダラダラとゲームをしたかったナス子は六つ子と一緒に風呂に向かわなかった事に後悔した。
もしかしたら仲居さんに伝えれば部屋を開けてくれたかもしれないが・・・基本頭の良くないナス子にはそんな知恵は浮かばず・・・、仕方なく温泉のある場所へとまた戻っていく。
「多分、入ってるよね?どっか行くにしても、ここの外観光スポットらしいものとかなんもなかったし・・・」
男湯に到着すると、本当は犯罪ではあるがゲームをやりたい一心でナス子はソロリと扉を開ける。
「あれ?スリッパ一個もない」
もし六つ子が温泉に浸かっているのならこの入り口には計6個のスリッパがあるハズだが・・・そこには空しい事に一つのスリッパも置かれてはいなかった。
「えー、じゃあどこに行ったって言うのー?!」
だが、これはチャンスだ。
誰も入っていないとは思うが、一応確認しようと恐る恐る中へ足を踏み入れる。
ナス子の中の算段は・・・すかさず中の脱衣所に入り、六つ子の誰かの荷物の中から部屋の鍵を取り出す!
ダッシュで部屋に帰り、何事もなかったかのように部屋で六つ子の帰りをゲームして待つ。完璧である。