第106章 【一松ルート】花詰草
もしも俺が、ナス子の事をずっと想ってなかったら?
その逆でナス子が俺の事をもしも好きではなかったら?
寧ろ、いつか好きではなくなるんじゃないかって不安が襲う事がある。
そう、幸せが幸せすぎて俺のこの気持ちは風船で言うと破裂寸前。
どれだけ想って募って空気がパンパンになっても歪にも膨らみ続ける不格好な風船はギリギリなラインで割れてはいない。
でも、いつか破裂してしまうんじゃないかって一緒に居る時に妙に恐怖を感じる。
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マンションの付近で最近見つけた野良猫に軽くご飯を分けて俺は目的地へと向かう。
最近の野良猫は保護活動?が積極的らしく猫の耳にはちゃんと去勢・避妊しましたと耳の先っちょが切れている事が多い。
虐待とかではない、これ以上増えないように印みたいなもん。
猫ブーム?ま、それでも金のあるやつはそんな事が出来るから有難いよね。
ニンゲンて、すぐに処分して消してしまおうとするんだから。
ニンゲンだっていらないヤツが俺含めこんなにも世にいるってのにさ、不公平だと思わない?
「なんか漫画みたいな事言うねぇ、一松~」
「へ?」
気づけばいつ入ったんだろう。
向かっていた場所に既に俺は居て、ソファの上に座っている。
そのソファにもたれかかるように、俺の彼女である年上のナス子は珍しく漫画やアニメではなく雑誌を見ていた。
「……俺、口に出してた?」
「うん、ずっと喋ってたよ」
「マジか………」
「あはは、さては私の独り言がうつったかな?」
「ど、どこから聞いてた?」
最初の会話なんて聞かれてたら俺の不安がダダ漏れじゃないか、溜まったもんじゃねぇぞオイ。