第92章 【チョロ松ルート】ネガティブ女子
<チョロ松side>
「ごめん、今日は気分じゃない」
「え、あ……そうなの?」
僕の名前は松野チョロ松、それでこっちの僕の腕の中で抱きしめられてるのが幼馴染でグータラでズボラでなんの計画性もない馬鹿な彼女ナス子。
え、言い方酷いって?
でもさぁ、間違った事は言ってないからね。
色んな意味で鈍感だし変な所で他の人間にも気を使って馬鹿を見る。
僕らが会えるのは週に2回。
と言っても、ナス子が仕事の出勤前に起きてさえすれば毎日でも会える訳だけど。
ま! そんな事はね、長い事幼馴染として付き合ってる時間もあってわざわざ僕の為に早起きしようなどとは彼女は思わない。
たまーに、ごく稀に、奇跡があってそういう日もあるんだけどね。
一週間ぶりに会えたナス子とその部屋。
正直僕らはあまり自分達の口からセックスしようとか言わない。
そして僕もあまり自分から言える方でもないし、行動らしい行動にうつすのも実はまだ慣れない。
もう付き合って月日も経ってるのにこんな始末。
それでも触りたいと思う自分がいて、まだ何もしようとはせずただ後ろから抱きしめただけなんだけど、ナス子の口からはそんな言葉が出てきた。
………うん、しようとは思ったんだけどさ。したいし。
いつもは逆に僕に痺れを切らしてナス子から誘ってくれる事も多い。
それに助かってる部分はあるんだけど、こうハッキリ言われちゃ手も出せないし今の体勢だって手の位置をどうしたものか、離れるべきかと悩む。
「あー、ごめん。チョロ松、チョロ松が悪いとかそういうんじゃないよ」
「うん、そっか。それ聞けただけでも安心……」
「さすが物分かりのいいチョロ松さ」
「と、でも言うと思った?」
自分の恋人の肩を優しく掴み、僕の身体に向けさせる。
抱きしめる事はやめて、真剣に彼女の目を覗き込むと、いつもより表情は暗く瞳は潤んでいて若干震えているのが伺えた。