第89章 【おそ松ルート】怪我の功名塞翁が馬
「ナス子!」
「うわっ、ビックリしたぁ!」
勢いよく開いた扉から、血相を変えたおそ松が部屋の中へと飛び込んでくる。
「ちょっとおそ松、病室なんだから大きな声出さないで……すみません看護師さん……」
真っ白に洗われた清潔感あふれるシーツの敷かれた狭い病院のベッドの上、仕切られたカーテンの向こう側にいる病人に配慮し、ナス子は慌てて人差し指を唇に当て静かにのポーズ。
「血圧も正常ですね。熱もないですし、問題ないですよ」
「ありがとうございます」
広げていた医療用具を手早く片付け、一礼をして看護師は次の入院患者のところへと向かう。
一連を黙って見ていたおそ松が、ベッドの傍らに置かれたパイプ椅子にドカリと腰を下ろす。
「…………」
「ちょっと……なに? なんか怒ってんの? 来て早々怖い顔してさ……どしたの?」
仏頂面アンドじと目に無言で睨みつけてくるおそ松に、ナス子はなんとなく肩をすくめてしまう。
「ちょっと……ねえってば、黙ってたらわかんないんだけどっ」
「………っハァ~~~~~~~」
「だんまりかと思ったら突然の盛大な溜息?! あっ……大きな声出しちゃった……いけないいけない」
とある病院の一室。
四人部屋ではあるが、隣と斜め向こうのベッドは空いており、部屋の中にはナス子ともう一人入院患者がいる。