第81章 【十四松ルート】ステイ
「最近さぁ、ナス子姉疲れてない?」
「え?」
松野家五男、松野十四松。
ナス子の恋人であり、そのお付き合いももう何ヶ月か経った頃のある日。
二階に寛ぐ末弟トド松が床に転がりスマホを弄りながらその相手に口を開く。
「そういえばそうだね……この前ミケ子に会いに行った時も空返事だったし」
部屋の隅っこに座り野良猫と戯れている、自称不吉な数字の四男一松も同じく、末弟と口を揃えて二人の視線はその彼氏である十四松の元に向く。
「十四松兄さん、ナス子姉に無理させてないよね? 姉さんは馬鹿力で底抜けの馬鹿だけど体力はないんだから」
「そうそう、お前みたいに精力体力有り余ってるヤツが満足するまで付き合ってたらナス子の身も持たないんじゃないの……?」
「え、えぇ?!」
兄弟の視線と言葉に汗を垂らす本人は言われてみて確かにと否定出来ない部分があり日頃の行いを脳裏に過ぎらす。
自分にとって幼馴染で姉のような存在、そして恋人のナス子。
両思いになって無事に童貞を捨てたその彼は、その味を覚えてしまい毎回自分に応えてくれる恋人に自分の体力が尽きるまで甘え、貪るようにその身体を堪能しているのが現状。
「んー……で、でもぉ!姉さんも気持ちいいって言ってギュってしてくるし」
「ハイハイ、惚気とかは聞きたくないけど……それはさぁ、ナス子姉が十四松兄さんに甘いから甘やかしてるだけなんじゃないの?」
「俺達兄弟の中で十四松だけは付き合う前から特別扱いされてたっていうか……甘かったよね、お前にだけはいっつも」
それは十四松も若干気付いていた事だった。
六つ子であり、幼少期からの幼馴染兼姉のような存在だった、今やその六人の想い人たる人物は、特に兄三人には割りとシビア、四男、末弟はいつもナス子に皮肉を言っては怒らせているからそういう態度になっているのだとも思ったが、自分だってナス子に対し皮肉めいた無自覚な言葉を出してしまう事もある。