第77章 【逆ハー卒業ルート】焼肉パーティ
三人が風呂から上がるまでの時間、およそ20分。
何事もなかったかのように居間でゴロゴロしていると、玄関の開く音がして、騒がしい連中が帰って来た。
「たっだいまー! いやーっ勝った勝ったぁ! お兄ちゃん幸せだよぉ」
「ふっ……今日はよく勝利の女神が微笑んでくれたな」
「全員プラスで戻ってくるとか何年ぶりだろう。今日は出たねー儲かっちゃったよ」
「アハハー! 大勝利~! 満塁サヨナラホームランっ!!」
どれもこれも上機嫌な声色。
会話から察するに、全員今日は勝ってきたようだ。
「おかえり~、なに、そんなに勝ったの? いくら?」
「スッゲーよ?! なんと四人で11万6500円!! んなーっはっはっはー!」
「内訳すると、おそ松兄さん3500円、カラ松4万円、僕も4万円で、十四松が3万3000円だから、長男はほとんど儲かってないんだけどね」
「おいっ、うっせーぞチョロ松っ! 細かいことはいいんだって!」
一気に明るく……いや、騒がしくなる家の中。
だが、この騒がしさがうっとうしくもあり、愛しくもある。
思わず苦笑が漏れたナス子に、おそ松がベッタリと纏わりついてくる。
「なぁなぁナス子~、この金でさぁ、今日は焼肉にしようぜぇ~? いーっぱい肉買ってさぁ! 焼肉パーティー!」
「私にしてみればタダで焼肉が食べられるのなら全然構わないけど?」
「フフン、決まりだな……っ! ブラザー達! 今夜は焼肉でハッピートゥナイトといこう!!」
「「「「「「イェーイ!!」」」」」
きゃっきゃとハシャぐ成人男性達。
焼肉の魅力とはいかなるものか。
しかし、焼肉はよいのだが、ナス子には言わねばならないことがあった。
今ならタイミングもいい。
「………ゴホンッ……! 焼肉パーティーでハッピートゥナイトもいいんだけど……なんか大事なこと忘れてない? アンタ達」
何故か何かのまつりごとのようにナス子を中心にして踊りながら回っている松達に、わざとらしい咳払いをしてそう言うと、足を止めた松達は各々顔を見合わせる。