第2章 平穏な日々に嵐はやってくる~カラ松~
<ナス子side>
「うっ、寒…」
気づけば私はコタツに突っ伏したまま寝ていた。
肩にはブランケットがかかっている。
今何時なんだろう。
「おおっと、ようやくお目覚めかい、お寝坊さんだなぁスリ~ピングビューティ~?↑↑↑ 」
目の前を見るとまたまたよく見知った顔が私の洗濯物を畳んでいる。
「え、か、カラ松?! なにしてんの??!」
寝ぼけ眼で顔を擦りながら、サングラスをかけた青いパーカーの男に目をやる。
「ふふ~ん、いつもの場所で貴重なカラ松ガール達との逢瀬を終え、マイハウスへ帰ろうと思っていたオレだが……シスターのマンション前を通り過ぎようとした時!ふとベランダを見上げたら洗濯物が干しっぱなしだった事を確認してな。このまままではダメだ……!ナス子のファッションコレクション達が冷たくなってしまう!と思い、今に至る」
なんだって?まぁいいか。9割り方聞かなくてもいい話だろう。
「あ~私寝ちゃってたのか、ていうかもう夕方?! 外薄暗いっ、あ、洗濯! 取り込んでくれたんだぁ、ブランケットもありがと」
窓の外を見ると夜を告げるかのように東から闇が広がろうとしていた。
「まぁ礼には及ばないさ……っ、なんたってオレは、優しいからな!」
テキパキと洗濯の山を畳み並べていく様はまるで母のようだ。
「ありがとうカラ松、やっと洗濯したのにまた面倒になるところだったよ!優しい男だねぇー、気がきくねー!! ヒュゥ~♪↑↑↑」
自分で自分優しいとか言っちゃうところは若干痛いけど、面倒だと思う事を心よくこなしてくれるのでそこは感心しながらおだてる。
「ふっ、こんな所でもレディの心を魅了し掴んでしまうとは、オレという男はなんて罪深いのか」
サングラスをかすかにクイッと上げると軽く染めた頬が目に入る。
カラ松は単純で馬鹿だけど、六つ子の中では情に熱くなおかつ脆い、そしてすぐ泣く。優しい心の持ち主。
イタイ発言は慣れたものだが、たまに耐え切れず肋や肋骨がミシミシする時がある。
それを失くせばかなり頼りになる次男なのではないだろうか。
それを失くしたらカラ松でもなくなるとも思うのだが。