第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ

　他の弟達は面倒臭い事から逃れられたとホっと胸を撫でおろす。
　いつもならチョロ松を間違いなく選択していたのだが、先ほどの会話の後だと少し緊張してしまう。
　その点、正直おそ松相手だとセクハラはしてくるも、緊張感はなくズバズバと文句も言える為楽だ。

「へーへー、わーかったよ！　行けばいいんでしょお、行けばーっ」

「うむ、行けばいい！！」

　いつもはこの会話逆のパターンが多いのだが、今日はその逆にナス子からしつこく誘う。
　面倒そうな事を言い、面倒そうな顔をしていても、実は指名された事に内心心を躍らせるおそ松。
　構ってもらえて嬉しい気持ちが強いのだが、そこはナス子にバレたくないと心底嫌そうな演技をしている。
　そのおそ松の演技には気づく事のないナス子ではあるが残された兄弟達だけはそこに若干気づいていたのだった。

「おそ松兄さんやっぱ頼りになるよねぇ、こういう時に長男がおそ松兄さんで良かったーって思うよぼく！」

「そうだな、いつもはクソな長男だと思ってはいるが、こればかりは長男であるおそ松が適任だろう……さすがだ、フフ」

「皆の喉を潤す為に自ら（？）買い物に進み出てくれるあたり尊敬を覚えるよねぇ」

「おそ松兄さんアザ━━━━っす！！」

「…………やっぱ持つべきものは長男だよね、うん」

　弟達からのわざとらしい言葉が相手でもおそ松は単純にも嬉しそうに鼻の下を擦る。

「お、お前らちょっと調子良くなぁい？　ま、まぁそうだな！　ここはやっぱ長男様が買ってくる酒が一番美味いよなぁ、だーっはっはっは」

「プっ……単純」

　聞こえないように漏らしたナス子の言葉はおそ松の耳に届く事はなく、二人で家を出て行った。
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