第1章 平穏な日々に嵐はやってくる~おそ松~
「え、う、うん」
自分から釣っておきながらこんなにあっさりと鍵をおそ松が返してくれた事にびっくり、いや、それが当たり前なんだけど。とにかく、鍵を返してもらえたので私は納得した。
「そんじゃ、俺は今からもう一勝負行ってくるわ。今度こそ出る気がするんだよねぇ」
私の3000円にキスしながらはしゃぐおそ松、自分も甘いとは思うが、まぁこのくらいなら……ゲームしてても課金用の資金はまだあるし、とにかく平和になれるなら安いもんだ。
2000円が3000円になってなんかちょーっと勿体ない気がするけど。
あと結局おそ松のペースになっている気もしているけれども!
「んじゃ俺はそろそろ行くわ。ごっそさーん♪ふんふんふーん♪」
鼻歌を歌いながらスキップまじりで玄関に向かって行く馬鹿。
「あ、おそ松」
「ん?」
「これからはインターホン鳴らしてね。大声で扉ガンガン叩かれたら迷惑になるからさぁ」
「あー、わかったわかった♪ 行ってきまーす!」
ガチャンと扉がしまると嵐が去ったかのように部屋が静かになった。
さんざん文句言ってても急に部屋から人の気配がなくなるとちょっと寂しい、私って現金な奴だ。
コミュ障の自分が分け隔てなく接せられる相手だとなおさら。
「うーん、面倒なヤツだがなんか憎めないし可愛い所あるし話やすいんだよねぇ」
と、コタツにまた寝ころぶと、先ほどの洗濯の山が目に入った。
「あ、早くやらないと日が暮れる」
面倒だけど今日はやるってさっき決めたし服がパジャマと制服だけだし、やるかぁ。
食器とクッキーを片付けるとやっと本題の洗濯に手をつけはじめた。
「・・・いただきまーすって言ってたけど・・・アイツ、お金返す気やっぱりないな・・・?」
そんなことを思いながら、洗濯物を干し終わる頃にはまたなんとなくげんなりした私だった。