第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
「━━━━━━━━━━はぁ、まさか彼氏に作る予定だったものをぼくが食べさせられる事になるなんてねぇ」
「ちょっとぉ? 嫌なら食べなくてもいいですよー?」
「いや、食べるよ? 食べるけどさぁ……………ぐっ、美味しい……もう!! どうしちゃったんだよナス子姉! なんでこんな女の子みたいな人になっちゃったのかなぁ?!」
あんなに一番煩く会う度に女性らしくしろだの残念だの言い続けるトド松に真逆の突っ込みを受けて衝撃が走る。
しかもトド松からのその言葉は今まで褒め薬を使った時しか聞いた事がなかった為嬉しさでニヤけてしまう。
「まじ?! まじすか? 美味しいか!! しかも私の事女の子らしいとか~っ、お姉ちゃん感動したんだけど! あ、勝負は私の勝ちじゃっ、わははは!!」
「あぁっ! もうっ、どうして口に出しちゃったかなぁっ、こんな事言ったらナス子姉が調子に乗る事なんてわかりきっていた事だっていうのにっ!!」
思っていても、決して言いたくなかった言葉を口に出してしまい、心底悔しがるトド松だったが、空腹とその珍しく美味しい料理の出来栄えに大人しく食事を開始した。
ナス子も向かいに座りながら食事をし、トド松が食べる様子をニコニコと見ている。
「ちょっと、こっち見すぎじゃない? もうちゃんと感想言ったでしょ! 食べにくいんだけど……っ」
「うへへ、ちゃんと美味しい物作ったらこんなに美味しそうに食べてもらえるんだねぇ! いつもチョロ松には怒られてばっかだし、新鮮!!」
「今日がたまたま成功しただけでしょ? 練習してたって言っても姉さんなら次作った時に失敗するような未来が見えるよね、はぁ。 チョロ松兄さんがどんな事を言ってるのか想像も容易いなぁ」
しかし、口では辛口を吐くトド松ではあるも嬉しそうに様子を伺ってくる想い人であるナス子の態度に悪い気はしない。
本当は兄の為に用意された材料で、兄の為に練習した料理でもてなされ、兄と一緒に食べるであろうこの食卓に、代わりに自分がいると言う事を考えると腹がたつにしても姉には同情してしまい、また少し助言がしたくなる。