第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
春の陽気も徐々に暖かさから暑く感じてくる頃。
二人は珍しくも外出デート中だ。
「この前のあの漫画、面白かったよね」
「あの漫画? なんだっけ?? チョロ松はウチ来ると漫画いっぱい読んでるしなぁ」
手を繋ぎながら歩く二人は今日は小規模の漫画や小説などが売られているイベントの帰り道である。
普段から家から出たくない病のナス子と言えど、この趣味に関してだけは自分から積極的に動く事も出来る。
「ほら、あれだよあれ……えーと、タイトルなんて言ったかなぁ?」
「漫画なんていっぱい持ってるし読んでるからわかんないよ~」
「あー……ダメだ、思い出せない! 喉の奥まで出かかってるのに、思い出せないのってなんか気持ち悪くない?!」
「それわかる! 今すぐにでも思い出したくて確認したくなるよね」
「そうそう!! ま、今からナス子の家に行く訳だし見れば思い出すからいいけどねっ」
喉の奥まで出かかっていると言っても内容も口にしなければナス子もわかるものもわからないので気にも留めず自宅へと歩みを進める。
「だねぇ、そういえばさ! チョロ松がこの前見たいって言ってたアニメあるじゃん? えっとなんだっけ…………」
「……ん? アニメ? なにそれ?」
「…………忘れちゃった、あははー」
「なんだろうね、この僕らのボケ老人みたいな会話」
「ボケるにはお互いまだまだ早い年齢なハズなんだけどねぇ~、春の陽気がお互いをダメにしますなぁ」
「お互いじゃないけどね、ナス子はいつもダメでボケてるようなもんでしょ、一緒にされると心外なんだけどねぇ?」
ニヤリと悪戯な笑みを浮かべ、少し首を傾げ覗き込んでくるチョロ松をわざと睨みつけたがその悪戯な表情も可愛いと思ってしまい、憎まれ口に足を踏みつけたくなる衝動に駆られるが我慢。
このような残念な会話を繰り広げる二人だが、実は既に卒業を迎えて早一ヶ月近くは経っていた。