第6章 悪夢の外伝
そういえば忘れていた。私の誕生日が近かった。
でもこの街って季節感ないしなあ。
何せいつも霧に包まれているし、私自身も、周囲を春っぽい気候にする特殊能力があるから。
「そうですか、誕生日ですか」
スティーブンさんはニコニコと、
「僕はパーティーは派手にやるのが好きなんだ。といっても、せいぜいクラウスを呼ぶくらいだろうけど。
何か欲しいものはあるかい?」
育ちは知らんが、スティーブンさんは南欧の血筋という話だ。クールに見えて賑やかなのが好きらしい。
……いや待て。三人だけの誕生日パーティー?
三人で三角帽子被って、無言でクラッカー引いてるサバトしか想像出来んがな。
「そんな……私はスティーブンさんがそばにいてくれれば、欲しいものは何もありません」
一瞬浮かんだサバトのことは表情に出さず。
私は可愛い恋人を演じ、恋人のお膝に頭をこすりつける。
するとスティーブンさんは愛おしげに私を撫で、
「冗談が大好きだな。僕の可愛い恋人は。
物欲と性欲にまみれた君が欲しいものが無いなんて事態は、天地がひっくり返ってもありえないと断言させてもらうよ」
私はゆらりと起き上がり、可愛く小首を傾げて、
「スティーブンさん。前々から思っていましたが、実は私のことが嫌いなんじゃありませんか?」
私はニコニコニコニコと微笑みかける。
恋人は伊達男の顔で優しく笑いながら、
「まさか。僕は君の今までの行動を分析し、純然たる事実を告げたに過ぎない」
わたくし、ガバッとタオルケットを放り、ソファの下の衣類に手を伸ばす。
「では、さようならスティーブンさん」
だが屈強な恋人にがばぁっと抱きつかれた。
「まあまあ待ちなさい。僕の言葉が間違ってないってことを今、証明してあげるから」
ずりずりとソファの上に私を引き戻しながらスティーブンさん。
お忘れかもしれんが、わたくしタオルケットの下は全裸である。
「変態」
「それは君だろう。もうこんなに反応させて。可愛いなあ」
胸を撫で上げる男。
「いやちょっと待って。何で物欲ではなく性欲の方を確かめ――ぁ、や……」
…………えーと……以下略。
で、誕生日がどうしたって?