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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



「ハルカ」

 あごに手をかけられ、上向かされる。
 目を閉じると、そのままキスをされた。

「ん……っ……」
 そのまま、しばし唾液の絡む音が響いた。

「どうしたの? 一度、電話に出られなかったみたいだけど」

 くっ。やっぱり覚えてたか。外から帰ったら着信のランプが光ってて肝が冷えたのだ。

「すみません。お風呂掃除してまして。この家、いくら掃除してもしたりませんから」
 胸にもたれると、抱き寄せられ、またキスをされた。
「前にも言っただろう? 出来るところだけでいいよ。手が足りない箇所は誰かに手伝ってもらえばいいんだから、君はこの家でのんびりしていて」
 か、金持ちめっ!!

「それより、おみやげがあるんだ。君も喜んでくれると思う」
「ああ、今朝言ってた野菜のことですか?」
「…………。たまに君の頭が心配になるけど、まあいいか」

 すっごいナチュラルにディスられた!!

 スティーブンさんはジャケットを脱ぎ、私をソファに手招きする。
 小さな紙袋をテーブルに置き、ソファに座ると私を膝に乗せた。

「開けてごらん。ハルカ」
 紙袋の中から出てきたのは、四角い箱。表面はシンプルに店名とロゴの箔押しだけ。それが逆に高級感をかもしだしている。

「すごい。セレブ向けの野菜って、こんな風に売ってるんですね」
「この期に及んで野菜だと思い込んでいる君の純真さが可愛いよ。開けてごらん」
 声に哀れみが混じってる気がしないでもないが、好奇心にかられ、開けて見た。

「…………っ!!」

 中は燦然(さんぜん)と輝くチョコレート。一粒一粒が宝石のようでございました。

「ショコラティエはチョコレート職人のことさ。ワインにソムリエがいるように、ショコラティエはチョコレートのプロだ。
 ここは人気の店だから人脈無しで買おうとすれば、何ヶ月待ちになるんじゃないかな」
「すっごい!」
 語彙力がなさすぎ、そんな言葉しか出ませんが、スティーブンさんは微笑む。

「一緒に食べよう」
 そう言われ、ゴクッと喉を鳴らしたが、

『それなら私と二人で分けましょうか』

「…………いえ、いらないです」

「どうしたんだい? 遠慮をしなくていいんだよ?」

 スティーブンさんはきょとんとしてる。

 でも私は食べる気になれなかった。

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