第4章 未来に繋ぐ炎
気がつくと、僕は知らない部屋の中にいた。
ウツギ研究所と似た匂いがする。
身体の傷は手当てされてるみたいだったけど、まだ痛い。それに、眠い。
また深い眠りに落ちる僕の耳にママの声が蘇った。
――きっといいマスターに巡り会えるわ――
そんなの嘘だよ、ママ。
僕が悪いのは確かだけど、自分に都合のいい人間ばっかり。
何で、僕が捨てられなきゃいけないの?
人間が怖い。
それを確信したのは、また目が覚めた後、見知らぬ人間が僕に話しかけてきたとき。
その人は笑顔だったけど、なんか受け付けられない笑みだった。
だから、僕は近づかないでという意味を込めてその人間に火炎放射を放った。
それからだった。
施設にいる人間が僕にたいして腫れ物に触るように接するようになったのは。
知らない人間に攻撃し、拒絶する生活を送る僕に、ある日変化が起きた。
「このヒノアラシ、僕が引き取っていいですか?」
僕がこの施設に来て数日後、知らない若い男の人が来た。
この人はニッポン地方ってとこの博士らしい。
でも、僕にとってはそんなことどうでもいい。
暴れるからという理由ですぐにボールの中に入れられた。
ボールから出された時、目の前に広がっていたのはまた知らない景色だった。
「ここは僕の研究所だよ。ここで他のポケモンや人間と仲良くなれるよう、サポートするからね」
ポケモンはまだわかるけど、人間と仲良くなる?
意味がわからない。
笑顔で手を伸ばしてきた博士に向かって、僕は火炎放射を放った。
それからというもの。
「シラナミ博士、またあのヒノアラシが!」
僕がこのシラナミ研究所に来て数日後。ここにいる粗方のポケモンとは仲良くなれたけど、人間は別。
怖くて怖くて仕方がない。
手を出してこようなら火炎放射。
一度、僕を連れていこうとした人間がいたけど火炎放射を放ったらあっさり研究所に返された。
人間なんて、そんなもん。
また誰かの手持ちになっても、弱いからって痛め付けられて捨てられる。
だったら、このままでいい。
この僕の考えが、ある人間とポケモンによって覆されるまで、後数日。