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蒼い月 番外編

第4章 未来に繋ぐ炎


そんな話をした数日後。
ウツギ研究所に1人の男の子が来た。ウツギ博士の話によると、今日旅立つ新人トレーナーらしい。

「俺、ヒノアラシがいいです!」

僕のことを一目見ただけで指名されたせいか、名前を呼ばれても、自分が選ばれたということに気付くのに少し時間がかかった。それに、自己紹介とかもなしにすぐボールに入れられてしまった。

「頑張れよ、ヒノアラシ!」
「今度会ったらバトルしようね!」

ワニノコとチコリータに見送られて、僕はマスターと一緒に冒険の一歩を踏み出した。





この時の僕はまだ、何も知らなかった。






旅立つ前に思い描いていたことが全部空想になってしまうだなんて。







僕の運命の歯車が狂いだしたのは初めてトレーナー相手のポケモンとバトルした時。

相手のポケモンはイトマル。相性ではこっちが断然有利なはずだったのに...

僕にセンスがなかったのか、相手の素早さが高かったのか、僕の攻撃は全くイトマルに当たらず、逆に僕が毒状態になって負けてしまった。

この時のマスターの顔はよく覚えてない。
ただ覚えているのは相手が、

「そのヒノアラシ、弱ぇな」

と鼻で笑いながら馬鹿にしていたことと、マスターの小さな舌打ちの音だけだった。
そして、この舌打ちの音と同時に、僕の運命の歯車は狂いだした。







「ヒノアラシ、戦闘不能、フォレトスの勝ち!」

それから、僕はバトルで立て続けに負けるようになった。攻撃を当てられず、相手の攻撃を交わせられない。
マスターはそれにイラついてるようで、僕はマスターの顔を見るのが日に日に怖くなっていった。

「ヒノアラシ、戦闘不能、クルマユの勝ち!」
「クルマユ、戦闘不能、ハトーボー改め、ケンホロウの勝ち!」

気付けば、僕よりあとに手持ちになったはずの後輩達がみんな進化していた。

一番長くトレーナーと一緒にいるのに進化しないしバトルにも勝てない。
その事に呆れ始めていたと同時に諦めていたマスターは、だんだん僕をバトルに出さなくなった。

僕がボールの外に出るのはご飯の時だけ。
穀潰しとなっていた僕を厄介払いしたいとマスターが考えるのは時間の問題であり、当然のことだった。
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