第4章 未来に繋ぐ炎
僕はヒノアラシ。
名前はまだない。
タマゴから孵って初めて目に入ったのはママの笑顔。
『生まれて来てくれてありがとう』
ママは笑顔でそう言った。
最初、僕の世界は小さな部屋の中だけだった。ママと一緒に遊んだり、お昼寝したりご飯食べたり。ずっとママと一緒だった。
そして生まれて数日後、僕は初めて外の世界を見ることになった。
何処までも続く青い空、緑の草原、そよそよと流れる風、空を、大地を駆け回るポケモンたち。
楽しくなった僕は、勢いよく外へ飛び出した。
外で走り回ったりして過ごすこと数日。
ある日、僕はママのトレーナー(ブリーダーっていうお仕事してるんだって)から、僕は近いうちにウツギ研究所に送られるという話を聞かされた。
ママと別れるのはとても悲しかったけど、
『大丈夫、きっといいマスターに巡り会えるわ。だって、ママの子どもですもの。楽しんでらっしゃい』
と言って、笑顔で送り出してくれた。
最後の夜はママにたくさん甘えた。でも、ママに心配かけたくなかったから泣くのは我慢した。
...けど、ママの子守唄聴いてたら結局泣いちゃった。
...今思うと、泣いたのってこれが最後だった。
研究所には、僕と同じ初心者ポケモンのチコリータとワニノコがいた。
僕達はすぐに仲良くなった。
いつも話題は新しいマスターのことや冒険のこと。
『オイラさ、リーグって奴に挑戦してみたいな!』
いつも元気なワニノコはバトルが大好きなやんちゃ坊主。
『あたし、コンテストやってみたい!』
3人の内、唯一の♀であるチコリータは魅せることに興味があるらしい。
『なあなあ、ヒノアラシは?なんかねぇの?』
『僕は...』
この時の僕は、ワニノコみたいにバトルがやりたい訳じゃあないし、チコリータみたいにコンテストに出てみたい訳でもなかった。
でも、ひとつだけ言えたことが、
『僕は、マスターと色んなものを見て世界をまわりたい』
だった。