第8章 夫婦
「っ!…」
「私は…普通の生活がしたいの。あなたに会う前の…こんなお屋敷なんて居たくないのよ。あなたが幸せでも私は幸せじゃない!」
そう言い放ち紗耶は寝室から走り去っていく
「まって!…」
黒崎も紗耶を追いかけ寝室を出る
紗耶が走っていく先はキッチンだった
「待ってくれ…!紗耶!」
「はぁはぁ…嫌よ」
紗耶の手にはナイフを持っておりナイフの先端は首の方を向いている
「待ってくれ…そ、そんなことしないでくれ!君に死なれたら僕は…!」
「私がいるだけで幸せなあなたには、私のいない不幸な人生になればいい」
「や、やめてくれ!何でもする…君が望むように何でもするから!」
黒崎は財閥家の息子とは思えないほど紗耶の足にすがりつき泣きながら訴える
「何がいい?君が前に住んでいたアパートを買い取って君が好きに使えるようにしようか…それとも…」
「あなたはそうやって何でもお金で解決しようとする…そこが嫌いなのよ」
「っ!…嘘だ…君は今までそんなにこと僕に言ったことなんて…!」
「言ったことないだけじゃない。思ってたわずっと。大翔が生まれてたしかに変わろうとしてくれてるのは分かるけど、でも変わらないところは私の嫌いなとこばかり!」
「ごめん…悪かったよ、だから…!」
「今から変えるから許せって言うの?私は、あなたに当時の恋人との関係を無理やり引き裂かれてるのよ?!」
「頼むから…そのナイフをこっちに渡してくれ…やめてくれよ…」
泣き崩れる黒崎
「じゃあ、あなたがいなくなってよ…」
「え…?」
「私のこと幸せにしたいんでしょ?あなたが居なくなれば私は幸せなのよ」
「…わかった。だからそのナイフは僕に渡して」
紗耶はナイフを黒崎に渡した