第25章 *そうじゃなくて*〜黄瀬涼太〜
香奈side
その日の涼太は、何だかおかしかった。
中休みも女子に囲まれてどっか行っちゃうし、
昼休みも他の女子と食べに行っちゃうし、
部活の休憩時間だって私がタオルとドリンク渡しに行った時以外、話してない。
更には今、
「ごめん、俺、今日約束してる子いるから。一緒に帰れないっス」
と言われた。
「…いいの。また明日ね。」
私…何かしたかな?
涼太の背中が遠くなるのを、ただ見てるしか無かった私は、今更に泣きたくなった。
「…遠野」
そんな私に気がついて声をかけてくれたのは、笠松先輩。
「っ…いいんです…嫌われ…たって…も、いいです…から…。」
「よくねーよ。…それに、黄瀬がお前を嫌いになるはずないだろ。」
「だって…私…うっ…わぁぁぁ…っ」
だめ。
こんなとこで泣いたら、笠松先輩に迷惑かかっちゃう。
そう思うのに、目からはポロポロと涙が溢れていた。
「先輩っ…私…まだ、涼太の事っ…好きなんです…っ。」
「…ああ。」
「だけど…私、何かしたなら…謝るから…。涼太と、話したいです…っ。」
涼太、戻ってきてよ。
嫌いになってもいいなんて、嘘だから…。
黙り込んだ笠松先輩の方を見ると、先輩は誰かに電話をかけていた。
「先輩…何して…」
「黄瀬にかけてる。」
「なっ…涼太は、他の子と帰って…」
「彼女が泣いてるのを放っておくような彼氏じゃないだろ。」