第25章 *そうじゃなくて*〜黄瀬涼太〜
「香奈〜っ!昼ご飯食べるっスよ!」
「ふふっ。叫ばなくても、近いんだから聞こえるよ。本当、犬みたい。」
昼休みも、
「本当、休憩時間香奈といると癒されるっス〜…」
「私も。涼太は本当、可愛くて癒されるよ。」
部活中も、
「香奈!今日俺頑張ったんスよ!どうスか、この服!」
「似合ってるよ。
でも、やっぱり中身は涼太だね。」
終いにはデートの時まで。
香奈は、一度も俺に『かっこいい』って言ってくれた事が無い。
本当に、一度も。
「好き」とか、「似合ってる」とか言われた事はあっても、『かっこいい』だけは未だに無い。
どうしたら言ってくれるんスかね…?
「香奈…」
「ん?どしたの、涼太。」
「香奈にとって、『かっこいい』ってどんな感じっスか?」
自分じゃどうすればいいのか分からなくて、俺は登校中にさりげなく聞いてみた。
「んー、クールな感じかな。」
クールっスか…。
…正反対な事求められたっス…。
「で?どうしたの?」
「いや、何でも無いっス。」
俺は、今日一日クールな感じで過ごしてみる事にした。