第95章 *嘘つき同士 feat.緑間
…昼休み、あいつが熱を出して倒れたと聞いた。
俺は、そんなことを気にかけるのは馬鹿馬鹿しいと思いつつ、やはり気になり保健室へ向かった。
ガチャッ。
保健室のドアを開けると、中には先生はいないようだった。
会議か何かだろう。
何を言えばいいのかも分からず、唯一閉まっているカーテンの前に立つ。
「…誰?」
その声は、確かに少し掠れていて、熱が引いていても風邪に違いない事が分かった。
「…熱は引いたのか?」
「なんだ、緑間か。」
俺の声を聞いただけで面倒そうにため息をつく遠野。
そんなに俺が嫌いなのか。
そう思ったが、
「…何突っ立ってんのよ。こっち来たら?」
と声をかけられた事により、少し安心した。
カーテンを開け、近くのパイプ椅子に座る。
「調子はどうだ?」
「熱がまだちょっとある。三十七度の微熱だけど。」
「そうか。…飲み物でも買ってくるか?」
「ううん、いい。」
意外にも、遠野との会話は普通に続いていた。
いつもなら必要な事しか話さない遠野が、今日はあまり嫌がっていない。
それどころか、「緑間、これから暇?」と聞いてきたから、少し驚いた。
「ああ、何もない。」
「じゃあ、少し話さない?」
…何だ?
熱で気が変になったのか?
「そんな目で見ないでよ。あたしのこと嫌いなのは分かるけど、今はただ、誰かと話してたいだけなの。」
「…そういうお前だって、俺が嫌いだろう。」
「嫌いだよ。でも…心配してきてくれたんでしょ?それなのに冷たくしたりしないよ。」
そう言って、唐突に手を重ねられる。
熱のせいか、かなり汗ばんでいた。