第95章 *嘘つき同士 feat.緑間
「遠野、嫌いなのだよ。」
「…わざわざ言わなくても、あたしも嫌いだから。話しかけないでくれない?」
相変わらず気に食わない奴だ、と思った。
占いなんて馬鹿馬鹿しいと俺を否定し、それでいて俺と同等の事が出来るのも、
自分にも他人にも平気だと嘘を吐き無理をするのも、
鈍いのも。
「あー、フられちゃった?」
はぁ、と嘆息しつつ遠野の背中を見つめていた俺に、いつの間にかいた高尾が声をかけてきた。
「…黙れ。あいつが、あの言葉の意味を分かっていると思うか?」
「真ちゃんだって、俺が言わなきゃ分からなかったくせに。」
…それもそうだ。
俺だって、他人に言われなければ気が付かなかった。
俺とあいつは、正反対なようで、似ている部分もあるのかもしれない。
認めたくはないが、高尾曰く、俺も相当鈍いらしいからな。
「ほんっと恋愛に関しては疎いよねー。真ちゃんも、香奈ちゃんも。
今日、エイプリルフールなのにさ。」
「嫌い」。
その言葉も、今日に限っては「好き」に変わってしまう。
俺の嫌いは、確かに嘘だ。
…だが、あいつの嫌いは本音だと思う。
「ま、そう気落とすなって!もしかしたら、気づくかもしんないよ?」
「あり得ないのだよ。」
あいつに限って、俺の言葉の意味を深く考えるなど、あり得ない事だ。
意識をしてない限りは、絶対にな。