第43章 *甘すぎチョコレート*〜青峰大輝〜 request
「私ってやっぱり不器用だね…。」
「そんなの、今更だろ。」
いつもなら「もう少し気をつけなきゃね。」と言う遠野が、今日だけは落ち込んでいた。
「女子っぽくないよね…。」
「んだよ、急に。」
「…えへへ。」
寂しそうに笑って、空を仰ぐ。
その姿が、いつもと違う遠野に見えた。
「青峰君は、甘いのと苦いの、どっちが好き?」
「あ?…甘い方かな。」
空を見上げたまま聞かれて、何だろうと思いつつ返す。
クッキーとピーマンだったら、クッキーの方が好きだ。
「本当?良かったぁ。」
何が良かったのかと思ってると、遠野はまたいつもの笑顔に戻って、鞄の中から小さい箱を出した。
「これ、青峰君に。」
「…俺に?」
「うん。下手だけど…バレンタインチョコ。」
そういえば、今日は2月14日。
すっかり忘れてたけど、バレンタインデーだ。
「サンキュ。」
一応礼を言ったけど、どうしたらいいのか分からない。
好きな奴からバレンタインチョコもらって、友達としてでも、それはやっぱ緊張するもんだろ。
「ね、ちょっと食べてみて?」
「おう。」
遠野のチョコは、一回溶かして固めた簡単な物だったけど、美味そうだった。
数個あるうちから、適当に一個口に入れる。
「ん、甘っ。甘すぎじゃね?」
「そっかぁ。これでもまだ控えめな方だったんだよ?」
うーん、とチョコを見て悩む香奈。
「どうしても甘すぎになっちゃうの。
…青峰君の事が、好きすぎるのかな?」