第32章 *10個*〜森山由孝〜
「何言ってるんだ。俺が行く。」
「はい?」
何のために先輩が行くんだろう。
よく分からないけど、真剣な顔だったから、話を聞くことにした。
「彼女に物を買わせるなんて非常識だろ。俺が払う。」
えっ、森山先輩が、男前発言した?
一瞬耳を疑った。
…今この瞬間なら、黄瀬君といいイケメン勝負ができそうなほど、かっこいいかも。
「せっ、先輩!?そんな、いいですよ!」
とはいえ、誰かに買ってもらうのは気が引けるので、遠慮しておく。
それこそ年上なんだから、余計にだ。
でもまぁ、今まで残念なイケメンなんて思ってたけど、意外にちゃんとイケメンなとこも…
「と、ネットの掲示板で見たんだが本当か!?」
…ない!
あるわけなかった。
さっきまでのときめきの反動で、いつも以上に呆れたし、イライラしたし、…悲しかった。
「…もう、いいです。」
結局、自分で買うことになったし。
遠慮したし、それでいいんだけど。
他の女の子の方が大切なのかなって、そんなことを考えてしまっていた。