第31章 *キミ不足*〜黄瀬涼太〜
…その日から、もう一週間が経った。
あたし達の関係は、というと…
「きゃー!黄瀬君ー!」
「香奈ちゃん、いいのー?彼氏が囲まれてますよー?」
「だから何?あたしには関係ないよ、あんな奴。」
全く変わらない、どころか、むしろ悪化していた。
お互いに避けて、無視して、逃げて。
そうやって、この一週間を過ごした。
黒板の『1月17日(金)』の文字を見て、そういえば今日は黄瀬君とデートの約束をしてたな、なんて事を思い出す。
…今更何考えてんだろ、あたし。
黄瀬君なんて、どうでもいいじゃん。
きっと、すぐまた他の彼氏が見つかるよ。
いつも無表情で、
デートとか全然しなくて、
二人になってもクールで、
触れても何も言ってくれなくて、
少しも優しくなくて…
「…無理、だよ…っ」
黄瀬君と正反対の人想像して、それでいいはずなのに。
まるであたしみたいな人で、それが寂しい、なんて。
…ああ、分かった。
あたしが、悪かったんだ…
「香奈ちゃん!?何泣いて…」
「黄、瀬く…」
自分勝手だったのは、あたしだ。
いつも冷たく接して、一緒にいれて嬉しいのに素直に言えなくて…
黄瀬君を傷つけてた。
黄瀬君は、ずっと、辛い思いをしても我慢してきたんだ。
あたしの事、ずっと、考えてくれてたんだ…
「あたしの…バカ…」
「香奈。」
机に突っ伏して泣くあたしの前で、大好きな彼の声がした。
…何で?
あたしなんか、もう、嫌いになっちゃったでしょ?
「話があるッス。」
「…うん」
自分が悪いのに、泣いて今更後悔するあたしの手を、黄瀬君は優しく引っ張ってくれた。
…着いたのは、体育館裏。
ここで黄瀬君が告られてて、それを見たあたしが衝動的に告白してしまった場所だ。
黄瀬君と付き合い始めたのも、この場所。
あれから一ヶ月も経ってないのに、懐かしく感じた。