第31章 *キミ不足*〜黄瀬涼太〜
香奈side
「もう、こんな馬鹿馬鹿しい事、付き合ってらんない!」
「香奈は冷たすぎっス!馬鹿馬鹿しいって何スか!」
「事実でしょ!あたしは悪くない!」
お互い譲る気は全く無い。
あたし達は、喧嘩をしていた。
それは、本当に馬鹿馬鹿しい事だと思う。
あたしだって、こんな事で喧嘩したくない。
…でも、黄瀬君が悪いんだし。
始まりは、いつも通りの会話をしていた時だった。
『香奈ー!』
『…何?』
『チューしてほしいっス!』
『嫌。』
『何でっスかー!』
『はぁ…くだらない事言ってないで、離れて。邪魔。』
『っ…何でいっつも冷たいんスか…』
『は?』
『香奈は俺の事嫌いなんスか!?』
『誰もそんなこと言ってないでしょ?』
『冷たい香奈なんか、俺は嫌いっス!』
『はぁ!?嫌いって何よ!?ふざけないでよ!』
あたしは普通に接しただけなのに、彼氏である黄瀬君がいきなりキレ出した。
しかも、終いには『嫌い』とまで言う始末。
あたしは、どうしてもこの嫌いという言葉が許せなかった。
彼氏でしょ?
自分勝手な理由で言っていい言葉かどうかくらい、考えてよ。
「もう知らないっス!」
ふいっと黄瀬君があたしから視線を逸らす。
何よ、そっちが悪いんでしょ。
「勝手にすれば?どうせ最後には寂しくなるんでしょ?」
黄瀬君の事だから、いつか自分から謝ってくるだろう。
そして、また嫌いなんて言ってないかのように過ごすんだ。
あたしだって、そんな自分勝手な黄瀬君は、嫌いだ。
絶対、何があっても許さない。
黄瀬君がちゃんと、自分のした事を反省するまでは。