第4章 *目覚まし feat.緑間
「何を言っているのだよ。遅刻する。」
「「何を言っているのだよ」はこっちのセリフなのだよ〜。ほら、私身長伸ばしたいし、ねっ。睡眠って大事!」
「真似をするな。それなら休日を返上して寝ればいい話なのだよ。ゲームの時間も漫画を読む時間も全て睡眠に置き換えたらいいだろう。」
「…少しくらい甘やかしてくれてもいいじゃんか…。」
香奈が何か呟く。
それまでのわがままを言う声とは全く違う、か細い声で言うものだから、近くに寄って「何か言ったか?」と聞き返した。
「むー…。真ちゃんは、少しくらい私を甘やかすべきだって言ったのー!」
「それが義務のように言うのはやめろ。」
それにしても…甘やかす、か。
今までもかなりそうしてきた気はするが、これ以上何かをしてやるというのなら、俺は…──
「一度きりだからな。」
「いいの!?やったぁ!ねぇ真ちゃん、何を…っ」
きゃっきゃとはしゃぎ始めた香奈の口を、俺の口で塞ぐ。
目を覚ましてやるためでも、静かにさせるためでもない。
ただ、好きだから…キスをした。