第8章 カコのあたしと赤司君
「君が僕の事を好きだということは分かった。それで、君は僕にどうしてほしいんだ」
『どうって…』
「恋人になれとでも言いたいのか」
『なれって…そういうわけじゃなくて』
どうなりたいとか考えていなかった。あたしはこの想いを伝えられれば満足だったから。
『赤司君があたしなんかと付き合うわけないって事は分かってる。だからこの気持ちを伝えたかっただけだよ』
「…そうか。…この偽善者め」
『…え?』
ぐサリ。
「そんなわけないじゃないか。人間という生き物は必ず見返りを求めて行動する。そこには意味がある。君のように何の見返りもなく告白なんてするはずがないだろう。僕はそういう偽善者が大嫌いなんだ」
『ちょ、ちょっと待ってよ…あたしは本当に…』
「僕が君なんかと付き合うはずがない、か。よく分かってるじゃないか。どうやら君と僕は知り合いのようだけど、残念ながら僕の記憶には君は残っていない。それだけの人間だったということだろう」
『赤司君…?』
「初対面の人間にここまでガッカリしたのは初めてだよ。偽善者のくせにそうじゃないフリをする。気に食わないな。それどころか、イライラする」
『っ…』
「ほう、泣くのか。泣いたら僕が同情して君に何か見返りをするとでも?残念ながら女の涙ほど信じれないものは無いんだ」
『ちがっ…』
「違わないだろう」
『…っ』
「もう話す事はないね。君のせいで貴重な時間を無駄にしたよ」
赤司君は颯爽と帰って行った。
あたしはその場にうずくまった。
どうして。どこをどう間違えた?こんなはずじゃなかったのに。
あたしは本当に、見返りなんて求めていないのに。