第3章 子供
栄養科2年、桃井さつき。大輝の幼馴染で、テツと同じように大輝に紹介してもらった。あっという間に仲良くなったあたし達は、今では親友と呼べるほどだ。
綺麗で優しいさつきには男どもが群がってくる…事も無く、皆大輝を見てビビッて逃げていく。そんなさつきは中学の頃からテツ一筋で、恋する乙女だから可愛い。
『ちょ、教授に呼ばれてやばいんだって』
「じゃあ何か飯作れ。それで勘弁してやらぁ」
「なら僕もお邪魔します」
「私も行きたい!」
『分かった。じゃあ今日まとめて鍋やっちゃおう』
大輝はようやくあたしのマフラーを離してくれた。が、ここで約5分のタイムロスを食らい、教授に怒られた。
『はぁ…』
「あれー?ちーん」
『…敦か』
調理学科2年、紫原敦。帝光中時代、鞄の中によくお菓子を忍び込ませていたあたしは、匂いを辿られて敦に見つかった。それも毎回毎日。同じクラスになった事を運のツキだと思い、昼休みの度に机の上でプチパーティをした事を今でも覚えている。
なぜ分かったかと言えば、あたしの事をちんなんて呼ぶのは敦だけだからである。
あたしの事をまた変わった呼び方で呼ぶのがもう1人。
「あ、っちー!紫っちもいるじゃないッスか!またパーティでもするんスか?俺も混ぜてー」
『違うから。だからハウス、涼太』
デザイン科2年、黄瀬涼太。あたしの姉が涼太の姉と仲が良く、小学校の頃からよく姉に着いていたあたし達は、自然と仲が良くなった。まさか、涼太姉に女装させられてピーピー泣いていたあの涼太が、モデル(笑)をするまで成長したのはびっくりした。
けれど、あたしの前にいる涼太は昔と変わりない、涼太自身だ。
敦と涼太もバスケの天才なんて言われており、皆と同じように荒んだ時期もあったけど、あたしとは変わらず接してくれた。
「犬じゃないッスよ、もー。あ、紫っち。赤司っちが呼んでたッスよ」
「分かったー。じゃね、ちん。黄瀬ちんも」
「俺はついでッスか!?ってやばっ!俺も次の授業あるからもう行くッスわ!またね、っち!」
あたしは涼太と敦に手を振った。それにしても…
『赤司君、か』
あたしは重い腰を浮かせ、次の授業が始まる教室へと移動した。