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隣を歩くのは

第8章 カコのあたしと赤司君


「…俺、昔に言ったよな。バスケがつまんねぇって」

『うん、聞いた』

「…あの時は、大丈夫だと思ったんだ。俺の信用する2人に同じ事を言ってもらえて、これが正しい答えだってバカの俺でも分かった。だけど、違ったんだ」

『っ…』

「実力差が付いて、相手のやる気までも失っちまったらもう何が楽しいか分からなくなっちまった。俺はもう、どうやってテツのパスを受ければいいか…分かんなくなっちまった」



大輝とテツは話しに聞くだけでも名コンビだったという。お互いの考えが分かり、それこそ最強コンビだった。それが…



「監督にも言われた。試合にさえ勝てばもう練習もしなくていーんだとよ」

『そんな…それって…』

「笑えるだろ。結局俺はそれだけの人間だって事だ」

『大輝…』

「…どうしてお前が泣くんだよ」

『大輝が泣かないから…大輝の心の代わりにあたしが泣いてるの』

「意味わかんねぇよ」



燃えたくても燃えられない。張り合いたくても張り合えない。それなのに、勝てば問題ないとまで言われた。

バスケが純粋に大好きな大輝にとって、これは酷すぎる。



『大輝っ…あたしは…あたしは何があっても大輝の味方だから!!!大輝がバスケから離れたって、周りを信じれなくなっても、あたしだけは大輝の味方だよ…』

「…んだよ、お前だってやめんなって言ってただろ」

『それは大輝が、本心ではやめたくないって言ってたから』

「っ…」

『けど今は違う。ここまで追いつめられて、苦しんで…もう自由になっていいんだよ。あたしはバスケの事分からないし、何も出来ない。出来ないけど、大輝の傍にいるから。せめてバスケから離れてる時くらいは、あたしが笑顔にしてみせる』

「……」

『だから、大丈夫だよ。大輝は大輝のままで、いいんだよ』

「……あぁ、ありがとう…」



大輝はギュッとあたしを強く抱きしめた。多分、泣いている。あたしは大輝の背中を撫で続けた。

ずっと大きいと思っていた大輝の背中は、今では小さくなっていた。
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