• テキストサイズ

隣を歩くのは

第8章 カコのあたしと赤司君


それから数日、あたしは赤司君に話しかけるなんて事は忘れ、大輝をずっと観察していた。

大輝は友人と話す時も適当に流しているだけの気がする。本当に少しだから、周りの皆は気付いていないけど。

それに、授業をさぼる事が増えた。



『…涼太、次あたし授業サボるわ』

「了解ッス!…って、え!?」

『お願い、先生には上手く言っといて』

「ちょ、っちぃぃぃ!?」



連続してサボるようになった大輝の元に、ついにあたしは足を運んだ。居場所はもう分かっている。屋上の、給水タンクの上。




『大輝』

「……何でこんなとこにいんだよ」

『久しぶりに大輝と話そうかと思って』

「…俺は眠いんだよ」

『じゃああたしも寝る』

「…」

『…』

「…はぁ、わーったよ。で、何の用だ」



季節はもう秋。いくら夏の名残が残っていたとしても、やっぱり外は少し寒い。小さく大輝が身震いしたのが見えた。


それに合わせて、あたしは大輝を抱きしめる。




「っ…何のつもりだよ。いくらでも、俺も変な気起こしかねねーぞ」

『大丈夫だよ。大輝はそんな事しないから』

「…」

『大輝は少し、人の温かさを知るべきだと思う』

「…聞いたのか」

『何も。何も知らないからこそ、こうやる事しか出来ないの』



大輝はおずおずと手を伸ばし、ゆっくりとあたしを抱きしめ返した。
/ 138ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp