第8章 カコのあたしと赤司君
それから数日、あたしは赤司君に話しかけるなんて事は忘れ、大輝をずっと観察していた。
大輝は友人と話す時も適当に流しているだけの気がする。本当に少しだから、周りの皆は気付いていないけど。
それに、授業をさぼる事が増えた。
『…涼太、次あたし授業サボるわ』
「了解ッス!…って、え!?」
『お願い、先生には上手く言っといて』
「ちょ、っちぃぃぃ!?」
連続してサボるようになった大輝の元に、ついにあたしは足を運んだ。居場所はもう分かっている。屋上の、給水タンクの上。
『大輝』
「……何でこんなとこにいんだよ」
『久しぶりに大輝と話そうかと思って』
「…俺は眠いんだよ」
『じゃああたしも寝る』
「…」
『…』
「…はぁ、わーったよ。で、何の用だ」
季節はもう秋。いくら夏の名残が残っていたとしても、やっぱり外は少し寒い。小さく大輝が身震いしたのが見えた。
それに合わせて、あたしは大輝を抱きしめる。
「っ…何のつもりだよ。いくらでも、俺も変な気起こしかねねーぞ」
『大丈夫だよ。大輝はそんな事しないから』
「…」
『大輝は少し、人の温かさを知るべきだと思う』
「…聞いたのか」
『何も。何も知らないからこそ、こうやる事しか出来ないの』
大輝はおずおずと手を伸ばし、ゆっくりとあたしを抱きしめ返した。