第7章 宿泊してみました
「あの時の俺は自分でも分かるくらいに腐ってた。自分の力に過信してテツの言葉にも耳を貸そうとしなかった。ずっと相棒って呼んでたテツをだ。そんな俺が、の前では笑ってるんだよ」
「俺を笑わせてくれたのは紛れもないだ。アイツを泣かせる奴はぜってぇ許さねえ」
大輝は拳を硬く握り、自分の太ももにそれを打ち立てる。皆が騒いでいる今、それくらいの騒音はかき消されてしまい、こちらに気付く者などいない。
「なあ赤司、お前は一体何がしたいんだよ」
「僕は…」
「お前はの事を…」
女将「失礼します」
…ヒヤリとした。大輝の口から出てくる言葉が怖かった。聞きたくなかった。認めるのが怖かった。
何より、認めてはならない気がした。
女将「もう1組の団体客様が来られました。隣を貸していただいてもよろしいですか?」
「構いませんよ。それじゃあ大輝、僕は皆に伝えてくるから」
「オイ赤司!まだ話は…」
大輝の声を無視して歩いた。スタスタと歩き、全員に少し騒ぎを控えるように伝え、隣に客が入る事も教えた。
教え終わったと同時に、女性客であろう声が部屋に入ってきた。
『…ウソ…なんで…』
「?」
『嫌…い、や…』
「っちー?向こう行ってトランプするッスー!」
「負けたら罰ゲームね~。って、あらら~?どしたのちん」
「?何ボーっと突っ立てるのだよ」
「さ…」
女性「あっれー?じゃん。久しぶりだねー」
「知り合いな、の…」
最後まで言葉を繋げることが出来なかった。足をがくがくして青ざめた顔をしているを見てしまったから。