第9章 お泊り~後編~
そう言えば、さっき真ちゃんが言ってたっけ。優しい赤司君とそうじゃない赤司君。
あたしが告白したのは、そうじゃない赤司君。
「あまりよく覚えていないが、昔の僕は誰もが認め、慕う赤司征十郎を意識していた。変わった僕はそれが無くなり、僕の言う事は絶対、そういう意識をしていた」
『親でも殺すってやつ?』
「…誰に聞いたんだい?」
『テツ』
「全く、そこまで話していたのか。そうだよ、その僕だ。僕は絶対だった。逆らう奴は許さない世界。…当時の僕は僕の想い通りに行く世界に満足していた。気分が良かったんだ。だから、の告白も何を言っても間違いではないと思い込んでいたんだろう」
『ちょっと待って。じゃあ…今の赤司君は、"どっち"なの?』
あくまで今の赤司君は、あの時の自分を過去の自分として見れている。けど、その昔の赤司君も過去の自分だ。じゃあ今の赤司君は…
「…どちらでもない、かな。少なくともテツヤと戦って、昔アイツらと一緒にバスケをした楽しさをまた味わえた。それは遥か昔、"オレ"だった僕の頃の赤司征十郎だ。ただ昔ほどではないが、僕の言う事が絶対だと言い切る自分もいる。結局は、どっちつかずの赤司征十郎なんだ」
『…赤司君は、辛いの?』
「辛い?僕が?どうして?」
『だって赤司君、辛そうな顔してるから』
「っ…」
赤司君はカッと目を見開き、驚いた表情を見せた。あれ、聞いちゃダメな事だったのかな。てかその表情怖いんだけど。
『ち、違ってたんならごめん!へっ!?』
「ちょっと、黙ってて」
『は、はい…』
黙ってろって、赤司君が話したいって言ったのにどういう事なんだ!
…なんて、言えるはずも無かった。
今あたしは、赤司君に抱きしめられているから。