第35章 記憶の中の彼は…。
今日から冬休み。
『ねぇ、お兄ちゃん、私これ買いに行きたい!』
まぁが雑誌を見て冬限定のラビットファーショルダーバッグを指差す。
カルマ『じゃあ、今から駅前のショッピングモールに行こうか。』
『ほんと?やったー!』
俺たちは上着を着て家を出る。
隣で寒いと言いながら歩くまぁを見つめる。
好きだよ…。このまま記憶が戻らなくても、もう一度、俺は、振り向かせてみせるよ…。
ショッピングモールに着き、まぁが目当てのお店に入っていく。
『見てみてぇ〜!ゲットしちゃったぁ〜!!』
嬉しそうにバッグを見せるまぁの笑顔に自然に俺の頬も緩む。
その後も店をぶらつき、陽が沈む頃、ショッピングモールを出ると、そこにはクリスマスのイルミネーションがキラキラと輝いている。
『ねぇ、写真撮ろうよ!』
そう言ってまぁはポケットから携帯を取り出す。
『お兄ちゃん、もっと屈んで!それじゃあ写らないよぉ!』
カルマ『はいはい。』
『はい、チーズ!』カシャッ…。
あれ…。私、このシチュエーション、知ってる…。
誰かに…この言葉を言った…。
頭の中に映像が流れる。
けど、隣にいるのが誰だか思い出せないっ…。
カルマ『まぁ、まぁ?』
『あっ…お兄ちゃん。私…。』
心配そうに私を覗き込むお兄ちゃんの黄色く透き通る瞳…。
吸い込まれそう…。私、この瞳が好き…。
あれ…?何で、好き?なんだろう…。
カルマ『そろそろ帰ろっか。』
『うん…。』
その日、私は夢を見た。
誰かに優しく抱きしめられ、愛しむように何度もキスをして、いたわるように私を撫で、愛される夢……。
誰……?あなたは…誰なの…??