第6章 交錯
「…………」
「…………」
無言のまま家康から差し出された薬を飲む。
「苦っ!!」
あまりの苦さに顔をしかめた。
まだ半分はある。
「………」
すっと残したままの薬を
机におこうとすると…
「全部飲んで。」
「や、もう完全になおった気がする。」
おずおずと薬を遠ざける
「………だめ。」
翡翠色の瞳で思いっきり睨まれる。
「飲まないなら無理矢理飲ますよ?いいの?」
にやっと笑っていう家康。
これはよくない。あわてて薬をもって飲む。
「うげぇ。。。まずいー。。。」
「良薬口に苦し。明日の朝もう一回飲んだら
すっかりよくなるよ。」
「明日もっかい飲むの?!やだぁ。。。」
「……だめ。ひなが、無理するから悪い。」
「うぅ。。。でも」
しれっと私の飲んだ薬の湯飲みを片づけ始める。
「俺がいるところで倒れさせない。」
「へ??」
「いないところでも倒れさせないけど。」
後ろを向いて薬を片づけながら
耳が赤くなってる家康がいる。
慣れないこといってるから照れてるな。
不器用で取っ付きにくいけど
いつも私を心配してくれる家康はあのときのままだ。
「ふふふ、さすが家康。心強いね。」
笑いながら返事すると、
家康が振り返る。
少し目を大きくひらいたあと、
普段笑わない家康が優しく笑った。
「あっ!笑った!」
思わず口にでてしまう。
「なに、人を能面みたいに笑わないと、おもってんの。」
あきれた表情で家康がいう。
「でもあんたも笑えるんだね。」
「???」
「ひなはよく無理して笑顔を作ってる。」
「……え。」
「今日だってそう。あの時の俺みたい。
誰にも心を許してない顔をする。」
!!!
あの時……
家康が人質としていた時だ。
「そんなこと……」
「ある。」
被せて否定される。
「じゃあ今日は終わり。ゆっくり休んで。
その泣きはらした目、まだ腫れてるし。」
「!!!」
「バレバレ。何に泣いてたかは聞かないけど、
もし誰かに聞いてほしかったら
いつでも聞くから。」
優しいなぁ…
気にしてくれてる人がいるのは
安心する。
なにもなくなった戦国時代に
私がいても大丈夫って、言われてる気がして。
「ありがとう。」
心からそう思った。