第6章 交錯
「さすが織田家ゆかりの姫ですな。信長様。
はる様もお美しいと思っていましたが
ひな様もまた麗しい。」
歯が浮くような台詞を
はかれながら
とりあえず微笑み頭を下げる。
前から思ってたけど
どうも慣れない。
信長様の姫っていうブランドだけに
ちやほやしようとしてる気がして。
素直に喜べない。
あのあと、政宗に持ってきてもらった手拭いで
必死に目を押さえ、
あとはもうどうしようもないので、
その腫れをごまかす為に
目尻に赤色のアクセントをのせたり、
現代でいうコンシーラー的なもので
必死に隈を消した。
「はる様は純粋無垢とでもいいましょうか、
ひな様はどこか憂いを帯びた美しさがありますね。」
まだ大名がいっている。
にこにこと笑いながら口許を隠す。
ーーーーーーー
「…………ひな、なんかあった?」
家康が訝しげに隣にいる政宗に聞く。
「いや、大丈夫なんだとよ。」
「ハァ?大丈夫じゃないでしょ、完全に。」
「なんだお前、わかるのか?」
政宗がにやっと、笑って家康にいう。
「……別に。完全に無理してるから。」
「大丈夫っていってんだ。俺には何もしてやれねぇ。」
「……そうだね。」
二人は信長様の横で
笑顔が張り付いたように笑う
私を見ていた。
ーーーーーーーー
瞼が重い。。。
いや、身体が重い。
泣きつかれたからかとりあえず
とにかく瞼が下がってきているのが
自分でもわかる。
でも、せっかく昨日宴までひらいて
私を受け入れてくれた信長様に恥をかかせてはいけない。
その思いだけで必死にこらえる。
「………以上です。本日は
ありがとうございました。信長様。」
「うむ、よろしく頼むぞ。」
最後の大名が出ていく。
パタン。
終わった。、。
と、思った瞬間信長様が声をあげる
「家康、ひなをみてやれ。」
「はい。」
「え?え?え?大丈夫ですよ??
ちょっと、疲れただけで。」
「貴様の大丈夫ほど信用ならんもんはない。」
「いくよ、ひな。無理してるのまるわかり。」
「えっ?!うそ?!そんな顔に出てた?!」
せっかくの謁見をやらかしてしまったのかと
自分の体調よりそっちを心配してしまう。