第16章 重ねて
家康に馬に乗せられ
はるは政宗の馬にのって
そのまま安土へ帰った。
馬の振動で傷口が開かないか
気が気でなかったけど
政宗は平気な顔ではるを抱え
馬に乗っていた。
その政宗を幸せそうにみるはるをみて
ほっとしたような、それでいてまた
もやもやする自分が嫌になる。
どこに連れていかれたのかわからなかったけど
三時間ほど馬を走らせたらつく距離だった。
私に気を使ってゆっくり走らせてくれたのだろう、
いつものペースだとおそらく2時間というところだろうか。
城につくとちょうど小次郎たちが
牢獄につれていかれるところだった。
ちらっと拘束されている小次郎がこちらをみる。
政宗がはるをぐっと
自分の方へ引き寄せる。
と、私も急に後ろに引かれ
背中にあったかいものが触れる。
「いっ。。家康」
見上げると
家康は私を後ろから抱きながら
翡翠色の目で小次郎を睨んでいた。
「へぇ。。。そっちか。」
小次郎がにやっと笑う。
びくっ!!
あの時の嫌悪感がまたよみがえってきて
ぞくっする。
「黙って歩け!」
政宗の家来にぐいっと引っ張られる小次郎。
と、今度はその瞳をまっすぐ私をとらえて言う。
「おい!!!!」
「お前。。「黙れ」
小次郎の声を遮って
威厳のある
冷たい声が背後から響き渡る。
同時に信長様の刀が
小次郎の喉元数ミリのところで止まる。
いつのまにか信長様が小次郎の前にたっている。
「今貴様の喉をかっきって
むちゃくちゃにしてやりたいが
ひながそれを望まぬのがわかるから
こらえてやっている。
それでもまだ黙らぬのなら。。」
完全に刃先が小次郎の喉につく。
赤い血が糸のようにしたたる。
「信長様!」
本当にかっきってしまいそうで思わず
声を出してしまった。